2016年8月23日火曜日

2016夏 甲川(下の廊下~上の廊下F1)

マッターホルン。記事の題名をみて,たぶん烏ケ山(山陰のマッターホルン)に誰か行ったのだろうと最初は思った。記事を読むと本物だったのでびっくりした。私の友達に不幸があり,モチベーションが下がっていたが,元気が出た。この日の天気予報は雨。所により激しい雨が降るとの事だったが,目指すは上の廊下最終堰堤。マッターホルンと甲川で張り合ったってしようが無いことだけど,中年おっさんの魂に火をつけてくれたFuに感謝。沢のぼり初体験のSkもいるので,しっかり安全第一とはいいながらも,通しで歩くには,時間をかけていられない。昼飯も食わずに,5人パーティーにしては珍しいハイペースで,駆け上がったのだが,甲川の水は決して甘くない。
①日時:2016.8.22(日)
②行先:甲川(鶯橋~下の廊下~中の廊下~上の廊下F1)
③メンバー:As,Sk,Oe,Ad,Mk
④行動記録:
鶯橋(8:00)→冑滝(11:00)→上の廊下F1(13:00)→林道P(14:00)
⑤行動概況:
天王滝
朝起きて雨雲レーダーを見ると,大山のある地域を赤でマークされた雨雲が通過して行くのがわかった。30ミリくらいの雨が,私が寝ている間に降ったらしい。鶯橋を降りると,嘘のように水が透き通っている。水量が少ない。Tが甲川の濁流は雨が上がると2,3時間で元の川の様相に戻ると教えてくれたことがある。この調子だと,順調にいけば最後まで抜けれそうだとその時は思った。三連釜の滝を越えてすぐに天王滝に着く。いつもはここで一服やるが,奥の滝にひょいと上がってみんなをロープで引き上げる。10分間でこの場所を突破する意味は大きい。満足だった。足払いの滝も,全員で等間隔で行動し,水流の強い滝も次々飛び込んで上がってきた。温かい場所に出たら,そこで初めて休憩らしい休憩をとる。そうすると上からぽつぽつ雨が落ちてきた。沢の雨は嫌いだ。木が濡れると楽しみが一つ減る。そればかりか,高い崖から大木がずり落ちてくる。滝の中に倒木や岩が混ざって流れ,危険が大きく増す。しかし悪いことばかりではない。ゴルジュが濡れると悪そうな岩の顔がますます悪く見える。冑滝直下のいつもの景色も,一層悪く見えた。冑滝をフリーでAsが上がったので,みんなで手を挙げて喜んだ。初めてのSkも喜んでくれたようだ。雨が降ると水温が上がって寒さが減る。上の廊下に近づくのに寒くならない。右岸の上部からまっ茶色の水が轟々と流れ落ちている。恐ろしい顔をしたF1に到着した時には,激しいスコールがメンバーを叩きつけた。
足払いの滝
滝からの水しぶきが今までとは明らかに違う。とっくに清流ではなくなった滝壺に向かって泳ぐ。右岸にOeが立ち私は奥の滝壺に飛び込んでたどり着いた。まずはOeが右岸までメンバーを引っ張る。Oeの所から奥まで私が引っ張り上げる。瀑音の下ではホイッスルサインが役に立つ。番茶のような色をした水が滝からすごい勢いで流れ落ちている。瀑音と爆風の厳しいコンディションの中に,魅力と危険が混在している。その中を進むと,脳内物質がほとばしるように分泌されてくる。笛をはずし,大きな声で指示を出していたため,とっくに喉がしゃがれていた。F1の本流をいつものように上がろうとするが,水流に押されて足が上がらない。そればかりか,ホールドがいつもより水流の30センチ奥にあった。F2から流れる水は真っ茶色で,雨脚は弱まるどころか一層激しくなる。
勇気の一歩で岩をまたぐ
圧倒的に行きたい気持ちの方が優っていた。左手も左足も完全に体重が載っていたが,F2の滝に水しぶきが飛び散る様が,滝にへばりつく,私の目に飛び込んできた。これは危険だやめよう。尚もアブミを掴み左岸から上がろうとしていたAsに向かって,無念の撤退コールをした。やむを得ない判断だった。撤退と決まれば長居は無用。次々に淵に飛び込み下流まで自動的に流されていった。上の廊下入口のエスケープルートまで,濁って足場が見えない甲川に難儀した。水量は多く水もぬるく感じた。それから,明瞭な踏み跡をたどり全員無事に到着した。メンバーは充実した顔をしてくれ,私もその顔を見て満足した。途中,Asに「このコンディションは楽勝過ぎね」と私が舐めたことを言ってしまった。言ってしまってすぐに「甲川の怖い罰が当たる」と思い訂正したが,その言葉を発して10分後に大スコールとなった。
Weeping in the Rain
Asに「すぐに罰が当たりましたねぇ~」と軽くからかわれたりした。Adはフルウェットを七分に切ってきた。動きやすくなって動きが早くなった。Oeは口癖で「逆によかった」と逆にを使う。今度言ったら逆じゃない時はどうなのかを問い詰めようと思う。Skは初めての沢がこれでは衝撃的だったのではないだろうか。今度の山川谷も期待してほしい。ちょっと前まで,ソロ登山が多かった。今はYCCのパーティーが好きだ。山行前は,いつもナーバスになるが,最後はいつもメンバーを信頼することで克服できる。これからも,YCCメンバーで研鑚しながら,先輩たちに近づきたい。Tの作り上げてくれたこのブログに,私が投稿するのはこれで最後となった。私が入会するきっかけになったのも,このブログの記事を見たことから始まる。Tには甲川をはじめ,北壁弥山尾根西稜,三鈷峰東壁,無雪期烏ケ山南西尾根,そして大休峠夜間雪中行軍など,厳しい山にたくさん連れて行って頂いた。Tは穏やかで,みんなにとても優しく接してくれる。しかし,山に入ると自然の猛威を凌駕するような気迫にみちあふれ,私たちが躊躇するような猛烈な積雪や藪漕ぎでも,切り裂くように道を進んで行った。ショッパイ汗をかきながら,追いつけない背中を夢中で追いかけた。キノコやイワナも教わった。確保の技術もルートファインディングも実践教育で叩きこまれた。落ち込んだ時はあの優しい笑顔で励まして下さった。何より大山の本当の魅力を感じさせて下さった。心からの感謝の気持ちを山便りに記そうと思う。ありがとうございました。感謝の気持ちをYCCの発展への行動に表し,これからも研鑚を積んでまいります。まだまだ教わることはたくさんありますので,末永くご指導賜りますよう心からお願い申し上げます。

3 件のコメント:

  1. 暑い盛りに大山ならば1に甲2に甲、3、4は無くて5に甲。
    とはいえ「良い子は真似しないでね!」雨の沢は実に危険です。何度も通って地形を熟知、増水と減水のありようを知って変化に敏感、逃げ足速いなら生きて帰れるのでしょうか。山も沢も荒れ模様の時最も美しい。でも命と引き換え?なあんてね。
    私もこのブログを見て入会した一人です。「追いつけない背中」を想うとき「♪闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう・・・諦めという名の鎖を身をよじってほどいてゆく」などという歌が聞こえてきたり・・・。

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    1. 3も4も甲
      「どこに行ってもいい
      道なんていくらでもある
      立てなくなるほど考えこむより
      行こうよ行こうよ 自分を叫ぼう

      元気なうちに やりたいこと 見つけだしたいよ
      大好きなひとに 会いたいときに会えればいいのにな
      気がすむまでケンカして仲直りしたいよ
      やりたいように やりたいこと できればいいのにな」
      こんな歌が聞こえてきました。
      大山の魅力を発信し続ける
      このブログを応援しています。

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  2. 「グッバイ」だけでは寂しすぎるから愛すべきMkへ最後のコメント。
    YCC昔に比べたら甲川沢登り少なくなったけど,Mkだけがリーダーとして会員を連れて行ってくれた。会員はMkに感謝せないけんね。次からは自分がリーダーになるという意識を持ってほしい。会員外でもMkの記事を見てそれを参考に甲川に行った人もいただろう。
    ハイペースを言うなら鶯橋から冑滝突破まで2時間だ。強いパーティなら5人でも行ける。今回は甲川初めてのSkを連れての3時間,よく歩いたのかな?
    わかる人にはわかるMkが勝手に命名した足払いの滝,最近は足をすくわれ,下に落ちるようになった。冑滝もフリーからカラビナ,そして3本フック,アブミを使って登るようになった。寂しいけど弱くなるとはそういうもんだ。
    これからはMkたちが大山の魅力を発信していってほしい。何しろ大山周辺を1番知っている山岳会だから。

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